大阪市都島区の山下歯科。破折ファイルについて。

診療への思い

破折ファイル

根管治療に使うファイルという器具が根管内で折れることについて。

破折ファイルとは?

Kファイル

根管治療を行う際に、根っこの管の中をファイルと呼ばれる針のような道具でお掃除します。その際、ファイルが偶発的に根っこの管の中で折れてしまうことがあります。これを破折ファイルといいます。

ファイルとは、根管の中をヤスリのように削る道具です。いくつか種類(Kファイル・Hファイル・ニッケルチタンファイルなど)がありますが、基本的にはらせん状(ドリル状)の刃がついていて、回転させることで根管の壁にくらいつき、削っていきます。

ファイルが折れてしまう原因

ファイルが折れてしまう原因はいくつかあります。

ファイルの金属の疲労

ファイルは、根管をヤスリのように削ってお掃除する器具です。根管は曲がっていて、根管内でファイルが曲がったり、削るときに力がかかったりします。何度も曲げたり力を加えたりを繰り返すと、ファイル本体に金属の疲労がたまってきます。例えば、針金を何度もぐねぐね曲げていると、そのうち折れるのと同じです。最終的に、ファイルにかかる力に耐えきれなくなってぼきりと折れてしまいます。

金属の疲労ということは、要するに器具の劣化ととらえることが出来、器具の管理をしっかりすれば、疲労によるファイルの破折は防ぐことが出来ます。極論すれば、常に新品のファイルを使用すれば、ファイルの破折はほとんど起こらなくなります。当院の精密根管治療では、常にファイル類は新品を使い、使い捨てているため、開院以来(10年で)、Kファイル・Hファイル(使用本数は計算していませんが、ニッケルチタンファイルの数倍はあるはずなので、3,000~5,0000本はありそうです。)の破折はゼロで、ニッケルチタンファイル(先日、計算しましたが、10年間で約1,000本使用しました。)は2本のみ折れてしまいました。折れたケースも、現状で特に問題はありません。

日本の場合、健康保険診療における根管治療の治療費が異常に安価であり、とにかく器具や材料に対するコストを下げなければいけません。そうなると、ファイル自体を何度も再利用することになり、そのうち折れてしまうということになります。健康保険点数から逆算すると、ファイル類の使い捨てはコスト的に絶対に無理なので、健康保険診療において、破折ファイル防止の対策は中々困難だと思います。

しかし、逆に言えば、新品を使ったとしても必ず折れないということはなく、偶発的に折れること自体は仕方ないとも言えると思います。医療ミスというわけではないと思います。そもそも、国が率先して、破折ファイルが発生しやすい状況(使いまわしせざるをえない)を作っているわけなので、半分以上国の責任もあると思います。

根管の形が細く複雑(曲がっている)な場合

根管の形が複雑な場合、例えばS字状になっていたりすると、ファイルを入れたときにグネグネ色んな方向に曲がってしまうため、ファイルを回転させるときに、一気に疲労が進み、折れてしまうことがあります。

乱暴に器具を扱ってしまった場合

ファイルを根管の壁にかませすぎて引っ張った場合など、無理な力を人為的にかけると、当然器具は破損してしまいます。

破折ファイルの問題点について。

破折ファイルは単に器具が管の中で折れているだけなので、それ自身が悪さをするわけではありません。破折ファイルがあったとしても、その根管に細菌感染がなければ、取り除く必要はありません。例えば、根管の中の消毒が既にほとんど終わっている状態で、新品で細菌感染していないファイルが折れたとしても、問題となる可能性は低いでしょう。

逆に、感染を除去しきっていない根管ないで折れてしまうと、その時点でそれ以上の感染除去が出来なくなるため、問題となります。また、ファイルを使いまわす場合、適切な滅菌処置が出来ていなければ、器具自体が感染源(院内感染)となっているため、それも問題となります。その場合は、可能な限り破折ファイルを取り除いた方が良いということになります。

破折ファイルの除去

マイクロスコープ視野により、破折ファイルの断面に超音波振動を与えて、破折ファイルを取り除きます。その際、多少なりとも歯を削って取っていく必要があるため、破折ファイルを取る必要性に応じて、除去の判断をします。

また、破折ファイルの除去は絶対できるわけではありません。例えば、根っこが曲がっていて、曲がった先で折れてしまっている場合、割れている断面をマイクロスコープを使っても確認できないとなれば、破折ファイルの除去は難しいです。そうなれば、根尖切除術・意図的再植法などの外科処置が適用になってくることがあります。

こういった破折ファイルの除去などの処置に関しては、かなりアドバンスな処置になってきますので、恐らく、保険診療ではカバーされないことでしょう。(折れたファイルを責任取って除去して欲しいというのは難しい話です。)