大阪市都島区の大阪精密入れ歯治療室。自由診療と保険診療の違いについて。

総入れ歯

自由診療と保険診療の違い

自由診療と保険診療の違いについて。

そもそも保険診療は最低限の治療です。

よく患者さんから質問されることとして、自由診療と保険診療は何が違うのかということです。自由診療は、名前の通り制限なく自由に治療できます。保険診療は、保険のルールに沿った治療内容に制限のある治療です。自由診療と保険診療は全てにおいて全く違い、日本には歯科医学が2つあると揶揄されるほどかけ離れたないようになっています。

これは、まぎれもない事実ですが、入れ歯治療やかぶせものの治療といった側面から説明していきます。

 

医療費の制限

歯科の医療費は、うなぎ上りの医科の医療費と違って、20年以上ほとんど据え置きです。年間3兆円という歯科医療に対する予算が決められていて、その枠内で治療するように制限されています。その間、歯科医師数は増加してきていましたので、歯科医師一人当たりの医療費はどんどん削減されていたということです。

この医療費の制限はかなり厳しいため、その医療費の中で出来る範囲での治療は本当に限られています。よく、自由診療がぼったくり扱いされ問題視されますが、保険診療こそお金がメインで医学はそっちのけのシステムです。

例 ファイバーコア

ファイバーコアは2016年から保険適用になりました。それまではファイバーコアは自由診療で処置されており、その時の治療費の相場は1~2万円くらいでした。保険適用になったのち、現在のファイバーコアの保険点数は前歯・小臼歯のファイバー1本が2,240円で、大臼歯のファイバー2本が3,230円です。保険適用になると、相場を無視した8~9割引きの治療費に強制的に値下げさせられます。これにより、自由診療で行われていた時より材料費を安くしたり、処置の工程を省略したりする必要が出てきます。言い方を変えれば、8割~9割方手を抜いていいという政府からのメッセージとも取れます。正規の治療の工程とはかけ離れたものになっていきます。

日本の自由診療の治療費の相場は、海外の先進国の歯科治療費の相場より少し安いくらい(激安保険診療の価格にひっぱられるため)なので、日本の自由診療の治療費がぼったくりということはまずありえません。日本の歯科保険診療が世界標準の9割引きで、激安大バーゲン状態です。

単純に材料費が治療費を超えている。

例えば、直接覆髄法という治療で、MTAセメントという材料が保険適用になっています。直接覆髄法の治療費は1,540円ですが、MTAセメントは1袋1万円くらいします。処置にMTAセメントを使用すれば、8,000円くらい歯科医院の持ち出しになるので、実際には処置不能です。別の治療法では、GTR法という処置で、治療費は8,400円ですが、GTR膜という材料が1万円程度しますので、この処置も処置不能です。算数が出来ない方が保険点数を決定しております。

なぜか昔からある処置の治療費が急に安くなる。

もうすでに処置をするのに慣れてきだだろうなんという謎の理由により、急に治療費が安くなります。最近だと、例えば、暫間固定というぐらぐらの歯を材料で固定する処置の治療費が1回の点数改定で急に3,000円から2,000円になったり、元々安い治療費がさらに33%オフにされるということが起こります。歯科医療費が定額のため、新しい治療法が保険適用されると、その分、従来の治療費を削る必要があるためです。何の前触れもなく強制的に治療費が減額されるわけですから、経営に関する計画というものはあってないようなものになってしまいます。

処置内容の制限

治療費の制限により、処置内容の制限が出てきます。入れ歯に関して、具体的にどのような制限があるのでしょうか。

治療用義歯(プロビジョナル義歯)がありません。

健康保険診療では、治療用義歯と呼ばれる入れ歯の設計が適切か調べるための入れ歯がありません。ぶっつけ本番で最終の入れ歯を製作し、入れ歯が合わなくても慣れるしかないというのが保険のルールです。健康保険の原資はみんなのお金なので節約しなくてはならず、快適性までは求められないということになります。

設計が限られています。

部分設計の設計は、様々なパーツを組み合わされて行われます。しかし、健康保険では、その多くの設計が認められていません。歯に入れ歯を固定する金具は、両腕鉤・双子鉤というものしか認められていませんが、実際は様々なタイプのものがあります。クラスプという金具にしても、他にもたくさんの種類があるし、樹脂製のウイングで見た目を良くしたり、各種アタッチメントで固定力をましたりすることも出来ません。金属ストラップ・プレートも認められていません。まさに最低限の設計となっています。見た目・歯へかかる負担の軽減・補強・違和感軽減などの様々な要素を捨てざるを得ないのが保険診療の入れ歯です。

総入れ歯の設計に関しては、金属の補強プレートが適用になっていません。そのせいで、少し前に磁性アタッチメントという装置が保険適用になりましたが、入れ歯の強度不足で実際には処置不可能という状態になっています。

保険適用の材料のあまり性能が良くない。

入れ歯の基本的な構成パーツの人工の歯や歯ぐきのピンクのプラスチック部分の性能はあまり高くありません。強度や変色しやすさなどの問題があります。健康保険の入れ歯が材料的に良い状態で使用できるのは2年程度という研究があります。

世界的に標準的な治療法が保険適用されず、コストダウン治療ばかり適用されていく。

わかりやすいので、かぶせものの素材を例に説明していきます。昔、かぶせものの標準的な素材は金合金でした。歯科用金合金は、金含有量が70~80%くらいのものが多く、非常に高価です。歯科用の金属を保険適用する際に、金合金は高価すぎるので無理なので、金銀パラジウム合金(口の中で腐食する。アレルギーになりやすい。)という金が12%しか入っていないものを適用にしました。いわゆる、標準的な銀歯です。しかし、近年の貴金属の価格高騰により、この妥協された金銀パラジウム合金ですら高価ということで、ハイブリッドレジンCAD/CAM冠・ピーク冠・チタン冠などの安価な材料が保険適用されました。見た目が白くて医学的に性能が高い材料が保険適用になったわけではなく、単にコストダウンのために適用になりました。ハイブリッドレジンCAD/CAM冠・ピーク冠は、材料の強度がそれほど高くなく、長期間維持させることは難しいと考えられます。元々、自由診療で行われていたものが保険適用になったわけではなく、コストダウンのために新しく作り出された治療法です。医学が主軸ではありません。

その他にも、陶材焼付鋳造冠(メタルボンド)・ハイブリッドセラミッククラウン・オールセラミックククラウンなど、医学的に優れた材料はいくつもありますが、それらは健康保険適用になることはありません。まあ、自由診療の8割引きで保険適用になってしまっても困るので、それはそれで良いのですが。

歯科保険診療は医学が中心(歯を長持ちさせる。快適に食事をとれるようにする)ということではないということは、頭に入れておくことでしょう。安価な歯科保険診療を否定するわけではありません。歯が痛くて困っている貧しい人を救うという意味では、素晴らしい制度です。しかし、この安い治療費で、歯の長持ち・見た目の良さ・快適性などを求めるのは間違っているし、歯科保険診療が世界の歯科の標準治療と誤解されても困ると思います。

歯科業界では、「保険で良い治療を」という言葉がずっと昔から標語のようになっていますが、裏を返せば保険で良い治療が出来ていないことはもうすでに歯科業界では当たり前のこととしてずっと定着しています。(以下のような活動をずっとされていますが、今の日本の状況で、健康保険で良い治療を行うための予算が歯科に分配されることはまずありえませんし、様々な問題もあるため、実現されるべきではないと思います。)

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