大阪市の山下歯科。健康保険で神経がすぐ取られる理由ついて。

MTA直接覆髄

健康保険で神経がすぐ取られる理由

神経の保存が健康保険制度では難しいことを解説致します。

神経を保存する治療法に関する保険点数について

神経を保存する治療法の歯科診療報酬点数表には、以下のような記載があります。

I001 歯髄保護処置(1歯につき)
1 歯髄温存療法188点
2 直接歯髄保護処置150点
3 間接歯髄保護処置30点

1 歯髄温存療法を行った場合の経過観察中の区分番号I000に掲げるう蝕処置の費用は、所定点数に含まれる。

2 特定薬剤及び特定保険医療材料の費用は、所定点数に含まれる。

通知
(1) 歯髄保護処置とは、歯髄温存療法、直接歯髄保護処置及び間接歯髄保護処置をいう。

(2) う窩の処置としての象牙質の削除を行うとともに、歯髄保護処置を行い暫間充填を行った場合は、う蝕処置と歯髄保護処置の所定点数をそれぞれ算定する。
ただし、区分番号M001-2に掲げるう蝕歯即時充填形成、区分番号M001-3に掲げるう蝕歯インレー修復形成又は区分番号I004に掲げる歯髄切断を行った場合は、歯髄保護処置の点数は算定できない。

(3) 同一歯に2箇所以上、例えば近心と遠心とにう窩が存在する場合に、それぞれの窩洞に歯髄保護処置を行った場合は、同日又は日を異にして行った場合であっても、1歯につき1回に限り所定点数を算定する。

(4) 歯髄温存療法とは、臨床的に健康な歯髄又は可逆性歯髄炎であって、感染象牙質を全て除去すれば、露髄を招き抜髄に至る可能性のある深在性のう蝕を対象とし、感染象牙質を残し、そこに水酸化カルシウム製剤などを貼付し、感染部の治癒を図り、3月以上の期間を要するものをいう。本区分は、当該処置を行った最初の日から起算して3月以上の期間内に2回程度の薬剤の貼付を行うことを含め、当該処置に係る一連の行為を包括的に評価し、当該処置を行った最初の日に算定する。

(5) 歯髄温存療法を行った場合は、当該処置を行った最初の日から起算して3月以上の経過観察を行った後に、歯冠修復等を実施する。なお、当該処置を行った場合は、処置内容及び経過観察期間等に係る事項について患者に対して説明するとともに、その要点を診療録に記載する。

(6) 直接歯髄保護処置を行った場合は、当該処置を行った最初の日から起算して1月以上の経過観察を行った後に歯冠修復等を実施する。なお、当該処置を行った場合は、処置内容及び経過観察期間等に係る事項について患者に対して説明するとともに、その要点について診療録に記載する。

そして、抜髄(神経を取る処置)の歯科診療報酬点数表には、以下の記載があります。

I005 抜髄(1歯につき)
1 単根管230点
2 2根管422点
3 3根管以上596点

1 区分番号I001の1に掲げる歯髄温存療法を行った日から起算して3月以内に当該処置を行った場合は、その区分に従い、42点、234点又は408点を算定する。

2 区分番号I001の2に掲げる直接歯髄保護処置を行った日から起算して1月以内に当該処置を行った場合は、その区分に従い、80点、272点又は446点を算定する。

以上、非常に硬い言葉で複雑に書かれておりますので、要約してみます。

以上の要約

  • 治療費は、歯髄温存療法1,880円、 直接歯髄保護処置1,500円、間接歯髄保護処置300円
  • 薬剤・材料費は、上記治療費に全て含む。
  • 処置が複数回かかったり、経過観察したとしても、追加で治療費は貰えない。
  • 神経を保護しようと処置しても失敗して抜髄になった場合、抜髄処置の処置料から歯髄温存療法・直接歯髄保護処置の治療費をペナルティとしてマイナスする。

歯科医師にとって、デメリットばかりのルール

健康保険のルールでは、神経を保存する処置は歯科医師に対してデメリットが多すぎて、実行できません。それぞれの項目ごとに、解説していきます。

治療費は、歯髄温存療法1,880円、 直接歯髄保護処置1,500円、間接歯髄保護処置300円

神経を保存する処置は、繊細な歯髄組織を如何に細菌感染から守るかという点において、非常に複雑で、丁寧にやれば時間もかかる処置です。しかし、300~1,880円という激安治療費では、そもそも歯科医院の経営が成り立ちません。300円では缶ジュース2本しか買えません。1,880円でも、スタッフの時給すら払えません。

別の見方をすると、歯科医院ではどんなに少なくとも1時間に.15,000円は稼がないと、維持すら難しいです。そのなると間接歯髄保護処置300円に使える時間は1分、歯髄温存療法1,880円に使える時間は6分です。絶対にまともな治療は不可能です。

薬剤・材料費は、上記治療費に全て含む。

そして、激安治療費の中には、薬剤・材料費が含まれております。ラバーダムや消毒薬、セメント代でも数百円はすると思います。間接歯髄保護処置は、この時点で材料費で赤字になります。

実は、MTAセメントという神経保護にとても良い材料がありますが、一応、健康保険適用になっています。但し、1袋使い捨てで5,000円程度しますので、それ単体で材料費が治療費を超えてしまいますので、歯科医師がボランティアしない限り、絶対にMTAセメントを健康保険で使用することが出来ません。この保険点数を決めた方は、きっと算数が出来ない方なのでしょう。歯科の保険のルールでは、粗悪品以外の材料を使用すれば、歯科医師がボランティアで患者さんにお金を上げないと治療できない状態なので、MTAセメントに限った話ではありませんが…。

処置が複数回かかったり、経過観察したとしても、追加で治療費は貰えない。

神経を保存する処置は、成功しているかどうかの経過を見るために、何回も患者さんに通院していただく必要がありますが、全て無料(再診料のみ)で診なければなりません。

神経を保護しようと処置しても失敗して抜髄になった場合、抜髄処置の処置料から歯髄温存療法・直接歯髄保護処置の治療費をペナルティとしてマイナスする。

これが歯科医師にとって、最大のマイナスポイントでしょう。一生懸命患者さんのためを思って神経を残そうとしたけれども、残念ながら神経を残せなくなってしまった場合、ペナルティとして神経を保護する処置の治療費を返金しなければいけません。

治療の成功率は100%ではありません。特に、神経を保護する治療に関しては、神経の状態が良く、処置も材料も最高のもので行ったとしても、成功率は精々7~8割程度でしょう。ただでさえ少ない治療費なのに、3~5回に1回は返金するリスクを負わなければなりません。材料費も全て歯科医師持ちになります。

それだったら、神経を残す処置を行わずにどんどん神経を取ってしまった方が、歯科医師としてはリスクがありません

残念ながら、神経を取る処置ばかりされているのは、国の制度によるものと強く言えるでしょう。国はお金を出さずに、医療者にリスクばかりを擦り付けているのです。

そして、その神経を取る処置も、治療費が安いために、医学的には不適切に行われる(ラバーダムすらしない)ことがほとんどで、日本人の歯の寿命はどんどん短くなっていきます。

お金の話ばかりになってしまいますが。

医は仁術であり、お金のことばかり考えている医者は最悪だという価値観が日本にはあります。しかし、医師も人間である以上、食べていかなければ死んでしまいます。お金がなければ生活できません。

また、良い治療には良い薬剤・材料が必要なことが多く、また丁寧な処置には時間的な余裕が必要です。医療にはお金がかかるということを健康保険制度が忘れさせてしまっていますが、そのために治療の質が犠牲になっているという現実が残念ながらあります。

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