ラバーダムは重要であり、ラバーダムなしの根管処置は治療ではありません。
ラバーダムは、根管治療を行う際に最も重要な処置のひとつです。100年以上前から存在する処置であり、歯学部の6年間のカリキュラムの中で絶対に習います。私の学生時代でも、進級試験でラバーダムの模型上でのテストがあり、装着できなかったら落第でした。また、国家試験の出題範囲でもあります。そのため、ラバーダムを知らない歯科医師は存在しません。
ラバーダムをせずに根管治療を行うということは、国家試験で当然知っているべき知識を生かさないということになるし、基本的には単なる手抜きということになってしまいます。
そして、ラバーダムを使用しない根管治療は、大学で習う根管治療(要するに、日本の歯科医師が全員知っている根管治療)と手順が違うので、別の治療法ということになってしまい、名前は似ているが内容は似て非なるものということになってしまいます。厳しい言い方をすれば、日本の大学での教育内容・国家試験の内容を基準にしても、ラバーダムをしない根管処置は、治療の基準を満たしておらず、治療に似ているが治療ではない何かということです。
例えば、BPS義歯は大学院レベルの話であり、BPS義歯を知らなくて歯科医師をしていても仕方ないということになりますが、ラバーダムはそうはいきません。
当院では、ラバーダムをせずに根管治療を行うことは100%ありません。それは、根管治療を行う歯に対して、隔壁をセットすれば100%ラバーダムを装着できるからです。(コンポジットレジン充填など、その他の処置の場合はラバーダムをつけられないこともあります。)
ラバーダムの効果
ラバーダムには、以下のような効果があります。特に感染予防が重要です。
- 口の中と根管内を隔離し、口の中の細菌が根管内に入ることを防ぐ。(感染予防)
- 根管内で使用する消毒薬が口の中に漏れないようにする。十分な根管洗浄できるようにする。
- 乾燥・防湿をする。
- 鋭利な器具(Kファイルなど)が口の中に落下しないように保護する。
- 口の中で水が飛び散らないので、処置中、患者さんが楽になる。
ラバーダムのデメリット
ラバーダムについて、付けない方が治療の成功率が良くなる可能性があるといった治療予後に関してのデメリットは一切ありません。ほとんどは、歯科医院側の都合であり、それも対策できることがほとんどです。
- 材料費がかかる。(歯科医院側の都合)
- 時間・手間がかかる。(歯科医院側の都合)
- つけると、少し息苦しいことがある。
- ラバーダムの必要性についてちゃんと説明しないと、患者からのクレームになることがある(歯科医院側の都合)
ラバーダムより大切なことがある?
「ラバーダムより大事なことがある」といいながら、ラバーダムをせずに根管治療を行う歯科医師がいます。ラバーダムより大事なことがあるということが正しいとして、ラバーダムも大事なので、ラバーダムをしない理由にはなりません。そもそも、ラバーダムを行うことに、治療の成功率が上がることはあっても下がることはないため、やって損することはありません。なので、ラバーダムは根管治療の時には100%使用するという以外の選択はありません。
正確には、ラバーダム以外にも大切なことがあるということだと思います。ラバーダムをしていたとしても、その他の処置が疎かでは、成功率は上がりません。
ラバーダムをしない根管治療の後の治療について
当院には、他の歯科医院で根管治療をしても上手くいかなかったというケースの方が沢山いらっしゃいます。私は、前に行った根管治療の内容を確認するのですが、ラバーダムを使用していない根管治療については、他の治療内容がどうあれ(自由診療でマイクロスコープを使った治療であっても)、本質的な細菌感染を予防できていないと考えて、全て再根管治療をお勧めします。再根管治療は行うことにどうしても少しずつ歯を削っていってしまうため、可能であれば何回も行うことは避けたいのですが、仕方ありません。
ラバーダムを行っていて、他の治療もおおよそ標準的な治療を行っていた場合は、前の先生はベストを尽くしており、それで治らないなら際根管治療は行わずに次のステップである外科的歯内療法をお勧めします。
ラバーダムしない根管治療は、歯の寿命を確実に短くしていきます。