大阪市の山下歯科。歯根破折接着治療をなぜ行うのか説明します。

入れ歯とインプラントの比較

歯根破折接着治療をなぜ行うのか?

歯根破折治療と標準治療について。

標準治療とは、世界的に認められたエビデンスがある治療法です。

標準治療とは、研究・論文の裏付けがあり、行うことが現時点で妥当な治療法の事です。標準治療として認められている治療であれば、殆どの局面で行われることが妥当ということになります。勿論、標準治療が全て正しいというわけではありません。例えば、現段階で正しいと思われていることが、将来の研究によって否定されることは普通にあることです。また、より結果の出る新しい治療法が開発されることもあるでしょう。

ただ、私も標準治療は大筋には妥当だろうと判断しておりますので、当院の治療法は殆どが標準治療です。

歯根破折治療と標準治療

歯根破折の治療のうち、多くのものは標準治療です。例えば、矯正的挺出・歯冠長延長術・ヘミセクションなどは、むし歯や歯周病の治療にも適用される標準治療と言えるものです。

歯根破折治療の中で、破折部位を接着する治療法(歯根破折接着治療)は、現状では標準治療と呼べません。研究が進み、臨床へ応用されてきてはいますが、標準治療と呼べるレベルには達していないと思います。

歯根破折接着治療が必要になるような状況の歯の標準治療は抜歯です。

なぜ歯根破折接着治療を行うのか?

それでは、なぜ当院で歯根破折治療を行うのかということを説明していきます。

歯根破折接着治療には、治療上のデメリットが殆どありません。

歯根破折接着治療が必要な歯の標準治療は抜歯なわけであり、歯にとって抜歯より悪い治療法はありません。歯根破折接着治療は、上手くいけば抜歯せずにすみ、上手くいかなくても結局抜歯する標準治療に戻るだけです。 抜歯の前に最後にチャレンジしてみて、駄目なら抜歯すれば良いだけなので、身体的なデメリットはほとんどありません。(歯根破折接着治療を行った後、病巣の経過観察するという条件付きで。)

もちろん、時間的・金銭的負担はありますが、それは全ての治療に同様に言えることなので、患者さんがそれぞれ判断すれば良いと思います。

歯根破折接着治療は、治療法として論理的に正しいです。

歯根破折接着治療は、割れた歯の感染源を取り除き、引っ付けます。引っ付けた接着剤の部分は生体ではないので、骨と引っ付くことはなく、その部分で軽い炎症が残ります。炎症はあっても、自覚症状が出ないレベルまで抑えますという治療法です。

治療の理屈は、精密根管治療・根尖切除術や意図的再植法、歯周再生療法と同様です。これらの治療法の応用版と考えられます。

場合によっては、歯周ポケットが残ることもあります。このことにより、生物学的に完全に治癒しないから、この治療法はおかしいという歯科医師もいます。しかし、標準治療でも、病気になる前の元通りになる治療なんてありません。

根管治療は、神経を取ってしまい歯も削ります。歯周病治療は、壊れた骨は基本的には戻りません。炎症も完全にとることは臨床的に難しい事も多いでしょう。病気になっていない歯よりは確実に寿命は短いです。

歯根破折接着治療は、歯を完全に元通りにする治療法ではありませんが、普段問題なく使えて、歯の寿命を延ばす治療法としては、適切だと考えています。

抜歯後の処置と比べて、優位です。

また、抜歯後の治療に関していえば、ブリッジや入れ歯の3つがあります。ブリッジは、歯を大きく削らないといけないというデメリットが大きく、入れ歯はどうしても装着感を全くなくすこともは難しいでしょう。

インプラントに至っては、歯根破折接着治療と同じく異物を体内に入れることによる炎症が起こってしまいますので、ほとんど優位な点はありません。インプラントは全体が異物ですが、歯根破折接着法の場合は、割れた線の部分は異物ですが、大部分がご自身の歯です。

問題は歯根破折接着治療は、処置自体の難易度が少し高いことです。

当院では、標準治療として、精密根管治療・根尖切除術・意図的再植法・フラップ手術・歯周再生療法・歯の移植術(親知らずなど)を日ごろから行っています。そのため、歯根破折接着治療も処置内容として普段の処置の技術を少し応用すれば問題なく出来ます。しかし、上記の処置を日ごろから適切に行うことは結構専門性が高いことなので、技術習得のハードルは高めだと思います。また、CTやマイクロスコープなどの機材も必須なので、設備面でのハードルも高いです。

補足:健康保険診療は、標準治療ではありません。

健康保険での治療は、残念ながら、治療費の制限により標準治療とはかけ離れた治療法になってしまっています。ラバーダムなしの根管治療が行われたり、世界的には使われない金銀パラジウム合金が普通に使用されている状況はおかしいです。

ただ、標準治療でない治療が全て悪かというと、そうではありません。標準治療はある意味医学的にベストやベターを目指すため、お金がかかります。そのお金は、患者さんまたは国(税金なので国民)への負担になります。貧しい方のために、内容に妥協があっても、治療できるようにすることは、大切なことだと思います。但し、その治療は標準治療でないということも、患者さんは知っておくべき(政府が周知する)だと思います。

そうでなければ、患者さんがどんな治療を受けるか選択する権利を奪うことになります。

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